こんにちは、松川まりこです。
お久しぶりの投稿となってしまいました。
もうすっかり秋ですね。
今日は、この季節にぴったりな日本の古典文学作品をご紹介します。
古典というと、少し読みにくく、取っつきにくいイメージがありますが、
こちらの作品は、みなさんもよく知っている
『シンデレラ』によく似たお話として知られています。
1000年以上も昔に、日本にもシンデレラ物語があったなんて、
びっくりじゃないですか(^^)?
落窪物語
著者:田辺聖子
発行所:(左)平凡社 (右)角川書店
上の写真の書籍は、田辺聖子さんが現代語で書かれたものですが、
原典の『落窪物語』は、作者も、出来上がった正確な年代もわかっておりません。
平安時代の文学ではあるのですが、『源氏物語』よりも古いお話なんですよ♪
(田辺聖子さんバージョンのものが読みやすいと思い、
最初に紹介させていただきました。)
ではさっそく、物語のあらすじをご紹介いたします!
時は平安時代。
主人公は、皇族の血を引く高貴な生まれでありながらも、
実の母親を亡くし、意地悪な継母にいじめられる姫君です。
毎日、朝から晩まで、異母姉妹たちのために華やかな衣服の裁縫を言いつけられ、
だけど自分は着る物も食べるものも事欠く状態。
お屋敷の隅にある、畳が落ちくぼんだ部屋をあてがわれた彼女は、
使用人からも「おちくぼ」と呼ばれ、虐げられます。(なんてかわいそう…(T_T))
でも、そんなある日、都でも評判の貴公子が姫君の噂を聞き、興味を持ちます。
二人は恋に落ちますが、それに気づいた継母は、二人の結婚の妨害を企みます…。
悪役、味方の思惑が飛び交い、テンポ良く進んでいくストーリーがとても魅力的です。
1000年以上も前の物語ですが、
嬉しい、悲しい、悔しい、妬ましい、憎い…といった人の感情って、
いつの時代も変わらないんだなと思わせてくれる作品です。
でも、わたしが思う『落窪物語』の一番の魅力は、
貴公子の道頼くんが、一途なところ!!(笑)
平安時代は一夫多妻制なので、
特に高貴な生まれの男子は、奥さんが何人かいて、当たり前なんです。
『伊勢物語』のむかしおとこや、『源氏物語』の光源氏を見ていても、
いろんな女性と浮名を流すのが、かっこいい!
みたいな風潮だったのかな?と感じるのですが…。
でも道頼は、落窪の君一筋で、
周囲から条件の良い結婚を勧められても、断固として拒否します。
しかも、道頼は生まれが良いだけではなく、
かっこよくて、仕事もできて、好条件男子!と誰もが放っておかないイケメンなんです。
案外、この物語が平安時代から長く愛されてきたのは、
一夫多妻制とはいえ、当時の女性から「こんな貴公子いたら素敵だわ~♡」と
女心をがっしり掴んで、
支持されていたからなんじゃないかな?なんて思ったり。(笑)
さて、これまでの記事で、
たびたび登場している平安時代というキーワードですが、
わたしは大学時代、この『落窪物語』を研究テーマに、平安文学を専攻していました。
原典も、読んでみると毎回違う発見があって、面白いものです。
現代語訳だけ読んでいると、訳した方の解釈に引っ張られて、
その「一択」になりがちなのですが、
原文を読んでみると、自分で感じる文脈が違って見えたり、
作者の「思惑」が垣間見えたりすることも…。
(でも作者がいない今、それが正解かは、わからないんですけどね!笑)
言葉を使って、自分の中にある物語や気持ちをカタチにする、
それは、今と変わらないんですよね。
でも、使う言葉はどんどん変わっていて、人々の暮らしも常識もガラッと変わっていて、
感じることも、もしかしたら違うのかもしれない。
でも、変わらないこともあって、
その時代の人々と、違うところも、同じところも
そのままに感じられるのが、平安文学の好きなところでした。
ちなみに、もしも原典を読んでみるならば、
小学館から出ている「日本古典文学全集」
または「新編日本古典文学全集」がおすすめです。
わたしが持っているのは「日本古典文学全集」の『落窪物語』ですが、
どこがおすすめかというと、(使い古していて汚いですが…)
真ん中に原文、上段には注釈、下段に現代語訳がついているのです。
現代語訳がついているというのが、やっぱり読みやすいポイントで、
原文を読みながらも、かなり頼れます。
他にも全集のシリーズはいろいろとありますが、
原文と注釈の二段がまえのものばかりで、
現代語訳がついているのは、このシリーズだけです。(違ったらごめんなさい!)
わたしは、いくつかの全集の『落窪物語』を集めて、
同じ部分の注釈を読み比べながら、自分なりの説や、解釈を組み立てていました。
文学の研究も、けっこう楽しいですよ。(笑)
原典まで手に取ることは、そうないとは思いますが…!
日本のシンデレラのストーリーに興味を持っていただけましたら、
田辺聖子さんの『おちくぼ姫』、ぜひ一度手に取ってみてください(^^)
田辺さんの視点をとおして、
現代のわたしたちが、さらに読みやすく、引き込まれやすい物語となっています。