ぼくの・稲荷山戦記

こんにちは、松川まりこです。

 

今回ご紹介するのは、わたしが小学生の頃に好きだった本です。

いつ読んでも響くものがある名作だと思っています。

古い作品ですが、全然古くならない!

児童書なのですが、大人にこそ感じるところがあるのではないかと思わされる物語です。

 

 

ぼくの・稲荷山戦記

著者:たつみや章

発行所:株式会社講談社

 

 

個人的には、

児童書の単行本(ハードカバーの本)の表紙デザインのほうが好きなのですが(笑)、

大人になって文庫本になっているものに出会ったので(軽くて場所取らないのがありがたい!)

写真は、文庫本バージョンとなります。

 

 

代々稲荷神社の巫女をつとめるマモルの家に

下宿人としてやってきた、ちょっと不思議な美青年の守山さん。

レジャーランド開発のために壊されようとする山と古墳を守ろうと

立ち向かう2人のお話です。

その山には昔から町の人々を見守る土地神がいて、

実は守山さんは、その土地神のお使いであるキツネ。

太古から自然に宿り、人間を見守ってきた日本の神様の存在が描かれますが、

説教臭いところはなく、素直に自然に対する尊敬の気持ちが湧いてくる一冊です。

 

 

マモルと守山さんが、開発を企画する企業の担当者に直接会ったときのことですが、

開発を中止してほしいと持ち掛けた二人に、責任者は自信満々にこんな話をします。

 

 

開発と聞くと、環境破壊と思われる風潮があるが、

うちの会社で作った住宅地は、

道路に街路樹を植え込み、憩いの場として緑があふれる小公園を複数確保し、

各分譲地も思い切り庭づくりが出来る広さにして、

緑化モデル地区として行政からも絶賛されている。

それは自然と人間の折り合い方として理想的だ。

計画しているレジャーランドも、こういうカタチで折り合っていくつもりだ。

 

 

なんだか、これだけ聞くと、

つい「たしかにそうかも…」と納得しそうになるのですが、

この本を読んでいると、もっと大事なことに気づかされるというか、

そんなのは人間の自分勝手な目線なんだなと、改めて考えさせられます。

山も川も海も、木も草も、鳥や獣や虫たちも、それぞれに心を持っていて、

人だけが想い、感じ、泣くのではないのだと。(←これも守山さんの受け売りですが(笑))

 

ちなみにこの時守山さんは、担当者にこう返します。

 

開発工事のために根こそぎにされた何万もの木は、自ら望んで切られたのか。

すみかを追われた鳥や獣たちが新しい巣を作るまでに、どれほど辛酸をなめたのか。

それに対して、あなたがたは何をあがなったのか。

いったい誰を相手に折り合ったというんだ。

 

 

自然を守るってどういうことなのか?

今をより良くするためには、どうするべきなのか?

「今」を生きる自分たちに問いかけられていると感じる一冊でもあります。

 

 

なんだか難しそうに感じてしまったらごめんなさい(^^;)

物語自体、ユーモアも含みながら、優しく、堅苦しさはなく、

守山さんを初めとしたキツネたちとのやりとりも可愛らしく、

深いけれども、とてもわかりやすくて読みやすい物語です。

 

レジャーランドの開発から山を守る、ということで、

ジブリ映画の「平成狸合戦ぽんぽこ」のイメージにも、少し近いかもしれません。

 

 

著者のたつみや章さんの作品は、

日本の文化や神話を下敷きにしたものが多く、わたしもよく読んでいました。

特に、今回紹介した『ぼくの・稲荷山戦記』と並べて、

通称「神さま三部作」と言われている

『夜の神話』『水の伝説』は、特におすすめです(^^)

 

『ぼくの・稲荷山戦記』の題材は環境問題ですが、

『夜の神話』は原発事故、

『水の伝説』は自然災害が描かれています。

 

特に『夜の神話』は、作品自体は93年に出版されたものですが、

福島の原発事故を目の当たりにしたわたしたちにとっては、

より考えさせられる物語なのではないかと思います。

(わたしが小学生の時に三部作の中で

一番お気に入りだったのも、『夜の神話』です。

ツクヨミ様という神様が、とてもかっこいいです♪(笑))

 

こちらも、機会があれば、また改めてご紹介いたしますね(^^)

この記事を書いた人

松川まりこ

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札幌出身、旭川在住。読書アドバイザー。 本にまつわるお話を発信します。レトロなもの、雑貨、甘いもの、カフェ巡りが好き。カバンに本を放り込んで、自転車であちこち駆け回ります♪