弥勒の月

まりこの本棚

読書アドバイザーの松川まりこが、面白いと思った本の紹介を中心に、本にまつわるお話を様々な角度から発信します。

こんにちは、松川まりこです。

 

今回は、ピリッとした気持ちになる時代小説をご紹介します。

ピリッと…という表現が良いのかわかりませんが、

切れ者の主人公のたたずまいに、なんだか背筋が伸びる感じがするんです(笑)。

 

 

弥勒の月

著者:あさのあつこ

発行所:株式会社 光文社

 

物語は、江戸の町で起きた身投げ事件から始まります。

切れ者の同心(現在の警察のようなもの)の信次郎は、事件の謎を追いながら、

身投げをしたおりんの旦那である、小間物問屋の清之介が気にかかります。

 

信次郎と清之介。

この二人は、どちらも深い闇を抱えていて、

対照的でありながら、とてもよく似ています。

現在・過去と、真っ暗なモノクロの世界にいるような気分になりますが、

その分、心の動きから来る微妙な表情が、

映像のようにくっきりと印象に残ります。

 

信次郎は、ヒーロー役のはずですが、

どこか得体のしれない恐ろしさがあり、

あまり安心できない感じがするんですよね。

その緊張感が、なんとも作品のピリッとした空気になっている気がします。

 

その分、岡っ引の伊佐治(信次郎の右腕のような役割をします)が

人間味にあふれた人柄で共感しやすいので、ちょうど良いバランスなのですが、

その伊佐治も、どこか一歩引いて、

信次郎の「得体の知れなさ」を観察しているような印象を受けるので、

それがなおさら、不安感を募らせます。

 

そこに、清之介という、これまた何かありそうな人物が加わり、

一触即発の空気感がたまりません。

 

事件は読み切りとなっておりますが、

こちらはシリーズで続編があり、

信次郎・清之介の因縁は深まって(?)いきます。

 

特にわたしは、4巻の『東雲の途』が好きです。

一語一語に重みがあり、思わず噛みしめてしまうこちらのシリーズ。

おすすめです。

この記事を書いた人

松川まりこ

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札幌出身、旭川在住。読書アドバイザー。 本にまつわるお話を発信します。レトロなもの、雑貨、甘いもの、カフェ巡りが好き。カバンに本を放り込んで、自転車であちこち駆け回ります♪