こんにちは、松川まりこです。
年も明け、日常が戻ってきた頃でしょうか。
みなさんはどのようにお過ごしですか?
さて、今日ご紹介するのは、東野圭吾さんの作品です。
ミステリー作品の多いイメージの東野さんですが、
こちらは、家族の繋がりを考えさせられる温かい物語です。
クスノキの番人
著者:東野圭吾
発行所:株式会社実業之日本社
不当解雇された腹いせに窃盗に入り、逮捕されたダメダメな青年の玲斗。
釈放されるよう助けてくれたのは、これまで存在を知らなかった伯母でした。
その代わり、条件がひとつ。
それは、この伯母の家が代々守ってきたクスノキの番人になること。
そのクスノキは、願いを叶えてくれると言われており、
玲斗は、番人として、そこに祈念しにくる人たちの案内役をすることになります。
ただし、祈念については、ほとんど教えてもらえず、
人々が何のために、そしてどのように祈念しているのかはよくわかりません。
でも、次第に、どうやらクスノキの祈念は新月と満月の夜に予約が固まっていること、
同じ名字の人が、離れた時期に祈念していること、
どうやらその祈念には繋がりがあるのではないか…ということに気が付きます。
そして、祈念にやってくる人たちの言動や、
なかでも祈念をする父の行動を不審に思い、
クスノキまで後をつけてきた大学生の優美に協力していくうちに、
祈念の本当の意味について、理解を深めていくことになります。
クスノキのルールとして、
「血縁関係」ということが、大事なポイントとなるのですが、
血の繋がりがあっても関係が希薄な家族もいれば、
全くなくても、家族であったり。
血縁とはなんだろうと考えさせられます。
玲斗自身は、シングルマザーの母親を幼い頃に亡くしており、
家族や、そんな境遇の自分に対する諦めのようなものを持っているのですが、
伯母の千舟と一緒に時間を過ごしていくうちに、千舟が大切な家族になっていきます。
流れに乗って、とりあえず生きていければ良いという考えを持っていた玲斗が、
千舟との出会いによって、次第に心を開き、
自分で考え行動を起こすようになっていく様子に、思わず力が入ります。
そして、伯母の千舟が抱えている想いにも。
温かな気持ちになる一冊です(^^)